「いっぱい狩れるといいね」
「ルディーンがいるんだから、何も狩れないなんて心配はないけど……みんな、持って帰ってこれないほど狩っちゃダメよ?」
森に行くまでの間、お母さんと手をつないでるキャリーナ姉ちゃんはずっとニコニコ。
それにお兄ちゃんたちやレーア姉ちゃんも狩りに行くのがうれしいみたいで元気いっぱいだから、お母さんはいっぱい狩りすぎちゃわないか心配してるみたいなんだ。
「ねぇ、お母さん。この森には何がいるの?」
「そうねぇ、うちの村の森と違って魔物はあまりいないけど、小動物や鳥とかなら結構いるわよ」
そんなお母さんに、レーア姉ちゃんがどんな獲物がいるの? って聞いたんだよ。
だからお母さんは鳥とかが獲れるんだって教えてくれたんだけど、
「え〜、魔物とかはいないんだ」
それを聞いたテオドル兄ちゃんが、ちょっぴり残念そうにこう言ったんだよね。
「仕方ないだろう? ここの魔力溜まりは森のかなり奥の方にあるって話だし、その強さもうちの村の森に比べてかなり弱いみたいだからな」
魔物って強い魔力で変質した動物でしょ?
だから弱いがちょっとだけいるけど、この森でうちの村の近くにいるくらいの強い魔物を狩ろうと思ったらすっごく奥の方まで行かないとダメなんだって。
「そうなの?」
「ああ。だがそのおかげで、森の恵みはかなり豊富だって話だぞ」
魔力溜まりはね、その魔力で動物を魔物に変えちゃったり薬草の効果を上げたりするだけじゃないんだって。
魔力溜まりから離れると魔物になっちゃうようなすごい変化は起こんなくなるんだけど、その代わりに動物や植物が元気になるんだよって、お父さんは教えてくれたんだ。
「うちの村の森は小さいからその恩恵はあまり感じられないが、ここの森くらい大きいと木になっている果物がほかの場所に生えているものより甘くなったり、獲れる小動物が丸々と太っていたりするんだぞ」
「って事は、頑張って探せばおいしい果物も持って帰れるって事なのね」
魔物が狩れないって事でお兄ちゃんたちはちょっとしょんぼりだけど、逆にお姉ちゃんたちは村で食べてるのより甘い果物が食べられるかもしれないって大喜び。
「キャリーナ、狩りなんで村でもできるんだから、それより果物や木の実を探すわよ」
「うん!」
さっきまでは狩りをする気満々だったのに、今じゃそんなのもうどうでもよくなっちゃったみたいなんだ。
でね、その意見に大賛成だったのがお母さん。
「露店で買えない事は無いけど、やっぱり採りたてや摘みたての果物の方がおいしいもの。こんな機会はめったにないんだから、私もその方がいいと思うわ」
お母さんも甘いものは大好きでしょ?
だからお姉ちゃんたちと一緒になって果物を採りましょうって言ったんだけど、今度はそれを聞いたお兄ちゃんたちが狩りをしたいって文句を言い出したんだ。
「え〜、せっかく森に来たのに狩りをしないの?」
「果物なんて狩りをしながらでも採れるじゃないか」
狩りをするのなら森ん中を歩き回って獲物を探さないとダメでしょ?
だから果物だったらその間に採れるじゃないかってお兄ちゃんたちは言うんだよね。
でも、お母さんはそれは違うのよって。
「この森の果物はね、木になっているものも多いのよ」
野イチゴとかなら歩いてる時に見つけて摘むことができるけど、木になってるのを採ろうと思ったら登んないとダメでしょ?
でもそんな事してたら周りの動物はみんな逃げちゃうから、果物狩りをしながら狩りをするのなんてできないよってお母さんは言うんだ。
「そっか。じゃあさ、さっきテオドル兄ちゃんも弱い魔物や動物を狩ってもつまんないって言ってたから、おいしい木の実とかを採る方がいいね」
「何言ってるんだ、ルディーン。今日は狩りに行くんだぞ」
「そうそう。果物なんて露店で買えるって、さっきお母さんも言ってたじゃないか」
それを聞いた僕はお母さんやお姉ちゃんの意見に賛成したんだけど、お兄ちゃんたちはやっぱり狩りがしたいみたいなんだよね。
と言うわけで、どっちにするかでケンカになりそうになっちゃったんだけど、
「そんなの、午前中は果物狩りをして、午後からは狩りをすればいいんじゃないかの? 別に一日中、そのどちらかをしなければいけない訳じゃないんだし」
お父さんがこう言ったもんだから、一気に解決しちゃったんだよね。
「そっか。果物を取ってるうちに近くの動物がどっかに行っちゃっても、僕が魔法で探せばいいもんね」
「そう言う事だ。それに、もし果物のなってる木を見つけたとしても、一日中それを採っていたら持って帰れないほどの量になってしまうだろ? そうならないためにも、半日くらいでやめるのが一番だと俺は思うぞ」
さっきはお母さんが動物や魔物をいっぱい狩っちゃったら持って帰れなくなっちゃうよって言ってたけど、そう言えば果物だっていっぱいあったら持って帰れないもんね
って訳で、今日は午前と午後で違う事をしようって決まりそうになったんだけど、
「そんなの、ずるいよ。だってお兄ちゃんたちがしたいって言う狩りは、ルディーンの魔法でいっぱいできるもん。でも果物は見つかんなかったら採れないんだよ」
「そっか。見つかんなかったら食べられないもん。そんなのずるいよね」
動物とかは僕が見つけられるから、おんなじ時間だけやるのはずるいってレーア姉ちゃんが言いだしちゃったんだ。
でね、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんまで同じように言いだしたもんだから、お父さんもお母さんも大弱り。
だってさ、ほんとだったら狩りをするのには待ち伏せしたり動物が通った後を見つけて追っかけたりしなきゃいけないから時間がかかるんだけど、僕の魔法を使えばレーア姉ちゃんが言う通りすぐに獲物を見つけることができちゃうもん。
だから探すのに時間のかかる果物狩りと狩りの時間をおんなじにするのはずるいって言うお姉ちゃんたちの意見もわかるんだよね。
でも、果物が見つかるまで探すって言ってもし見つかんなかったら、今度jは狩りをする時間が無くなっちゃうでしょ?
「もしルディーンの魔法で木になってるものが見つけられたら、何の問題もないのにねぇ」
だからお母さんが僕の頭をなでながら、困った顔してこんな事を言い出したんだ。
「そうだ! ルディーンは魔法で魔物を探してるんでしょ? だったら果物とかは見つけられないの?」
多分お母さんはそんな事できるはずないよねって思いながら言ったんだと思うけど、それを聞いたレーア姉ちゃんは大興奮で僕にそう聞いてきたんだ。
でもさ、僕の探索魔法って魔力の波を周りに飛ばして、帰ってきた魔力で探してるんだよね。
だから生き物じゃないと魔力を持ってないから見つけられるはずないじゃないか! って僕は言ったんだけど、
「あら知らないの、ルディーン? 果物のなってる木だって、生きてるのよ」
そしたらレーア姉ちゃんにこう言われちゃったんだよね。
それにね、横で聞いてたキャリーナ姉ちゃんまで一緒になってできないなんて変! って言いだしたんだ。
「さっきお父さんが、この森の木の実は魔力のおかげで甘くなってるって言ってたもん。なら魔力があるんじゃないの?」
あれ? そう言えばそっか。
お姉ちゃんたちに言われて初めて気が付いたけど、そう言えば植物だって生きてるよね?
それにキャリーナ姉ちゃんが言う通り魔力で甘くなってるんだったら、果物だって魔力があるのかも?
僕がそう思ってた所に、レーア姉ちゃんがダメ押しでこんな事を言ったんだよね。
「ルディーンできないって言ったけど、やってみた事はあるの?」
「ないよ……」
「ならやってみればいいじゃない。もしかしたらできるかもしれないでしょ?」
今まではそんな事できるなんて思った事も無かったから、レーア姉ちゃんの言う通り試したこともなかったんだよね。
それにこの探索魔法はドラゴン&マジック・オンラインの中にあったものじゃないから、もしかしたらそんな使い方ができるのかも?
と言うわけで森に着いたらほんとに果物とかを探せないのか、一度やってみる事になったんだ。
キャリーナちゃんは狩りがしたかったのではなく、お父さんやお母さんと一緒にお出かけするルディーン君がうらやましかっただけなんですよね。
なので元々狩りをすること自体にはこだわりが無かったので、それよりも楽しそうな果物狩りがしたい! って思ってしまったと言うわけです。
そしてそんなキャリーナちゃんに甘いものが大好きなシーラお母さんとレーアちゃんが乗っからない訳がありません。
おまけに本編では語られませんが、シーラお母さんはこの森の中に桃に似たとても美味しい果物がある事を実は知っているんですよ。
だからディック君が言った、狩りをしながらでも探せるじゃないかと言う意見に、木に登らないと採れないものがあると反論したわけです。